2022年9月24日、フリー/スピリチュアル・ジャズの巨星ファラオ・サンダースがこの世を去りました。享年81歳。
僕は普段「このミュージシャンが好きだから作品コンプリートしよう」といったように、1アーティストに固執してレコードを買うことはありません。
好きなアルバムを好きなタイミングで買うのがモットーで、そのためお気に入りのアーティストでも「意外とディスコグラフィが揃ってなかった」なんてことがよくあります。
逆にそんな買い方をしているのに「知らぬうちに沢山の作品を所持している」ということは、それだけそのアーティストに心動かされた回数が多いとも言えます。
僕にとってファラオ・サンダースは正にその一人で、気づけば我が家にはこんなにも多くの彼の作品が溢れていました。
今回はそんなファラオ・サンダースの作品をいくつか紹介しようと思います。
本当は、才能あるミュージシャンやアーティストは生きているうちに報われるべきだと思いますが、彼の残した素晴らしいレガシーは永遠に生き続けます。
このコラムを通して、この偉大なサックス奏者について知り、そして彼の作品に心動かされる人が一人でも増えたらいいなと思います。
ファラオ・サンダースと僕の出会いはこのアルバム。
1974年にリリースされた「Love In Us All」という作品で、このアルバムのA面全てを使用した大作名曲"Love Is Everywhere"に心を打たれました。
パーカッションとピアノとヴォーカルが徐々に熱気を帯びた後に訪れる一瞬の沈黙。
ジョー・ボナーによる美しいピアノが、ゆっくりと至福の世界へ誘います。
しんしんと雪が降り積もる、静かな冬の夜に聴きたい名曲ですな。
ファラオ・サンダースのサックス・プレイは、絶叫のようなフリーキーなブロウと、美しくも儚い精神世界の二面性を持ち合わせます。
このアルバムのB面に収められている、師ジョン・コルトレーンに捧げた"To John"は、フリーキーな面が全面に出た(出過ぎた)一曲で、僕は未だに最後まで聴きったことがありません・・・
これもファラオ・サンダースの代表作として有名ですね!
1969年の「Karma」というアルバムに収録されている"The Creator Has A Master Plan"です。
カヴァーされたり、サンプリングされたり、リミックスされたりと、彼の音楽を聴いたことがない人でもどこかで耳にしたことがあるかもしれません。
特徴的なヨーデル唱法を披露するのは、盟友レオン・トーマスです。
彼の代表作を3曲挙げるなら、前述の2曲と"You've Got To Have Freedom"ではないでしょうか。
1980年の「Journey To The One」というアルバム(ごめんなさい!持っていませんでした)に収録された楽曲ですが、実はその前に発表されたオリジナル・ヴァージョンが存在します。
それが収録されているのが、写真左の「Ed Kelly & Friend」というアルバム。
実質ピアニストのエド・ケリーとのWネーム・アルバムですが、契約上の問題で '& Friend' という表記になってしまったそうです。
写真右のアルバムは、1987年オランダでのライヴを収めた「Africa」というアルバムで、"You've Got To Have Freedom"のベスト・テイクと名高い名演が収録されています。
さて、ようやく僕のダントツおすすめアルバムの登場です!
少し前に再発もされた、1977年の「Pharoah」という作品で、水墨画のように美しいアートワークにも名盤の品格が漂いまくっていますね。
A面を全て使った"Harvest Time"も良いですが、個人的にファラオ・サンダースNo.1名曲だと思っている"Love Will Find A Way"をレコメンド!
パーカッシヴなビートの上を、サンダースの味わい深いヴォーカル、センチメンタルなリフを奏でるオルガン、ひとしきり歌い終えた後に満を持して登場の激しくブロウするサックス。
フリーキー路線を少し嫌厭してしまう僕ですが、何度も聴くうちにこのサックスの登場を心待ちにしている自分がいることに気付かされました。
早く!!もっとくれ!!足りない!! みたいな感じです。
本当に素晴らしい曲なので、ぜひ皆さん聴いてみてください!
ちなみにこのアルバム、なぜ色が2種類あるかというと、どうやら印刷の途中でインク切れを起こしたらしいのです。なんてお粗末な・・・
最初は茶色で、インクが無くなってからは水色。というのが僕の推測です。ラベルの色が茶色なので。違うかな?
どちらもオリジナル・プレスと言って良いと思いますが、水色ジャケの方が数が少ないようです。
No.1おすすめ曲も登場して、さてもうそろそろ終わり。という雰囲気を漂わせましたが、まだ終わりません。
1987年「Oh Lord, Let Me Do No Wrong」というアルバムです。
レゲエ的なリズムを取り入れたタイトル曲、"Oh Lord, Let Me Do No Wrong"の素晴らしさたるや・・・もう・・・
さっきNo.1を出しましたが、これもNo.1です。
こちらのヴォーカルも、おなじみの盟友レオン・トーマスさんです。
最後です。本当です。
円熟味。円熟味の化身のような佇まいのこちらは、1987年の「A Prayer Before Dawn」というアルバム。
内容もまさに円熟味。
これを 'らしさ半減' と評する方も多いようですが、僕はとても良いアルバムだと思います。
さて、これで本当に終わりにします。
2021年のFloating Pointsとのコラボの影響もあってか、彼のレコードはどんどん入手困難になりつつありますね。
お店に入荷する機会もめっきり減りました。
もし幸運にも店頭で見かけることがありましたら、ぜひ手に取ってみてください。
きっと安い買い物ではないと思いますが、それは必ず素晴らしい音楽体験になるはずです。
ご冥福をお祈りします。
バナナレコード名駅店 稲垣
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